【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第101条【法人のために設定した用益権の消滅】

法人ノ為メニ設定シタル用益権ハ三十个年ノ期間ヲ以テ消滅ス但三十个年ヨリ短キ期間ヲ以テ設定シタルトキハ此限ニ在ラス*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

390  法人は、法律の仮想で有形人と同視したものです。法律の力でこの無形人を生存させているので、その力でこれを死亡させることもできます。つまり、法律上ある会社を法人とし、後にこれを廃止するのも自由です。この会社の廃止は法人の死亡に当たるので、その法人のために設定された用益権は消滅せざるをえません。生存しないものは、権利を有することはできないという論理によるものです。

では、法人が生存する以上は、その用益権もまたともに存続するのでしょうか。用益権は終身権であるとの原則に拘泥してこれを論ずれば、この問題に対してそうだと答えるしかありません。しかし、法人というものは、多くは永遠無期に生存します。市町村がその例です。これらの法人が永遠に用益権を有するとすれば、所有権は永遠に虚有と用益とに分かれ、それが完全なものとなることはないことになります。そうすると、国家経済上の弊害は非常に大きいものとなります。つまり、立法者はこの弊害の発生することを恐れ、そのため用益権を終身権利としたのです。生があって死がない、またはその死期が定まらない法人について特にその権利が消滅すべき期限を定め、これにより弊害を予防する趣旨を貫徹する必要があります。これが本条でその権利が30年で消滅する旨を定めた理由です。

 これを30年としたのは、人生平均して30年は内外で行動するので、比例をここにとったものであり、要するに有形人のために設定した用益権の存在時期となるべく、同一にしようとしたにすぎません。

 

391 用益権は、あらかじめその期限を定めてこれを設定することができます。その期限が予定してある場合には、その経過によって消滅することは当然です。これは有形人のために設定した用益権についてだけそうなるのではなく、法人の有する用益権についてもまた同様です。そのため、その法人が有する用益権について期限の定めがない場合には、法定の期限30年で消滅すべきですが、その期限の定めがある時はもとよりその経過によって消滅せざるをえません。ただし書は、つまりこの意を示したもので、特に30年より短い云々と記しているのは、この期限より長いものは、法律の制限に違反し、あたかも死亡後もなお存在することを約したのと同じく無効となることをあわせて示したにすぎません。

*1:法人のために設定した用益権は、30年の期間で消滅する。ただし、30年より短い期間で設定したときは、この限りでない。