【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第138条【賃料の支払時期】

1 金銭ヲ以テ借賃ト為シタルトキハ賃借人ハ合意シタル時期ニ之ヲ払ヒ合意ナキトキハ毎月末ニ之ヲ払フコトヲ要ス但地方ノ慣習之ニ異ナルトキハ此限ニ在ラス*1

 

2 果実ヲ以テ借賃ト為シタルトキハ収穫後ニ非サレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス*2

 

【現行民法典対応規定】

614条 賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

46 賃料を払うのは賃借人の主たる義務です。この義務はいつこれを履行させるべきでしょうか。これがまさに本条の規定するところです。

 本条は、金銭を賃料とした場合と果実を賃料とした場合とを区別し、それぞれの場合で義務を履行すべき時期を指示しています。

 ① 金銭を賃料とした場合 この場合に合意で時期を定めたときは、その時期に支払わなければなりません。これは当然のことで、説明するまでもありません。合意であらかじめこれを定めていない場合には、毎月末に支払わなければならないものとしています。わが国の普通の慣習を採用したからでしょう。しかし、地方によっては、3か月ごとに支払うとする場合や、半年(盆・暮れの2期とする類)ごとに支払う慣習がある場合もあります。そのため、このような慣習がある地方ではその慣習に従います。

 ② 果実を賃料とした場合 この場合には、その果実の収穫後でなければ賃料を請求することができないものとしています。その収穫前に賃借人は耕作・播種・肥料等の費用を必要としてもまだ少しの収益も得ていないので、将来の収益のためにその費用を負担させるべき論理がないだけでなく、事実上まだ収穫していない果実を支払わせることはできないからです。

*1:金銭を賃料としたときは、賃借人は、合意した時期にこれを支払い、合意がないときは、毎月末にこれを支払わなければならない。地方の慣習がこれと異なるものであるときは、この限りでない。

*2:果実を賃料としたときは、収穫後でなければこれを請求することができない。