【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第21条【公法人に属する物①―公有物・私有物】

公ノ法人ニ属スル物ニ公有及ヒ私有ノ二種アリ*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

113 第20条で資産には公私の区別があることを述べました。本条以下第23条まで、公の資産の説明がなされています。

 「公の法人」については、第1条の(字解)の中で詳しく説明しました。つまり、国、府・県・郡・区・市・町・村を1つの人とする場合です。

 国・府・県・郡・区・市・町・村に属する物は公の資産です。この資産を2種に分けられます。つまり、公有物と私有物です。この2つの区別については、以下の2条で詳しく規定されています。

 

114 公有物は、次条に示すように国用の物で、行政法が定める原則に従うものです。私有物は公の法人に属しますが、その性質が各人の資産と同じなので、民法の原則に従います。これがこの区別の主たる目的です。

 公有物は民法の支配を受けないので、その多くはこれを譲渡することができません。また、これを時効で取得することもできません。フランスでは、これを譲渡しようとする場合には、まず法律でその公有の性質を変じて私有物をすることが必要です。例えば、城塞・道路のような公有物を譲渡しようとする場合には、その城塞や道路を廃止します。これを「種目変換」といいます。種目変換の後は、行政法に規定する手続(多くは公売法)で売却することができます。また、時効で取得することもできます。種目を変じた場合には、公有の性質が私有の性質となるからです。わが国の制度はまだ確定していませんが、民法の趣旨はフランスの制度のようにすることにあるものと思われます。

*1:公法人に帰属する物には、公有及び私有の2種があるものとする。