【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第41条【所有権の取得等】

1 所有権ハ当事者ノ間ニ於ケルモ第三者ニ対スルモ本編及ヒ財産取得編ニ記載シタル原因及ヒ方法ニ依リ之ヲ取得シ保存シ及ヒ転付ス*1

 

2 主タル物ノ処分ハ従タル物ノ処分ヲ帯フ但反対ノ証拠アルトキハ此限ニ在ラス*2

 

【現行民法典対応規定】

本条2項

87条2項 従物は、主物の処分に従う。

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

195 所有権を取得するについては、種々の原因・方法があります。財産取得編には、すべて権利の取得に関する規定を置いています。所有権の取得方法もまたその中にあります。つまり、同編第1章から第8章には主として所有権の取得方法が掲げられています。また、本編の中にも多く掲げられています。例えば、第50条の用益者の果実取得権、第126条の賃借人の収益権、第195条の占有者の収益権のようなものです。

 このほか所有権を保存し、添付する方法もまた種々あります。例えば、本編第348条その他はすべて財産移転に関する規定です。

 所有権の取得の効力は、当事者相互の間におけるのと、第三者に対するのとでは異なる場合があります。そのため、本条では2つの場合を各別に明言しています。例えば、特定の土地を売買するのに、売買契約が成立すると当事者つまり売主・買主の間ではその所有権は直ちに移転しますが、その契約の登記をしない間は買主は第三者に対してその所有権を主張することができません。そのため、第三者に対してはまだ所有権は移転しないものとなります。

 「主たる物の処分は従たる物の処分を伴う」とは、そもそも主たる物を売買・譲与・遺贈した場合には、別に明言せずとも、従たる付属物をも合わせて売買・譲与・遺贈したものとみなすという意味です。例えば、不動産を売買した場合には、これに付属する用法による不動産を合わせて売買したものとみなすわけです(第9条参照)。

 主従を各別に処分する意思があるという証拠がある場合には、もちろんこの規定には従いません。

 物の主従の区別は、本編第第15条以下に明らかにされています。

 

196 本編第1部第2章以下では、用益権その他の物権を取得する方法が掲げられ、第2部の各章には人権を取得する方法が掲げられています。所有権の章だけにはこれを取得する方法が掲げられず、単に本条を設けたのはなぜでしょうか。

 所有権の取得・保存・転付に関する事項は、その範囲が非常に広く、わずか数条でこれを規定し尽くすことはできないからだと思われます。かつ、これは種々の章に関係するものです。そのため、その概略もここに掲げることができません。これが本条で単に他の編を引き指している理由です。ただ、その項目のいくつかは、次の消滅の項目の中にあります。一方に所有権を失う者があれば、一方にはこれを取得する者がある場合が多いからです。つまり、次条の第1から第4の各項目は、一方では喪失の原因となり、一方では取得の原因となるものです。

*1:所有権は、当事者間においても、第三者に対しても、本編及び財産取得編に定める原因及び方法により、取得し、保存し、及び転付する。

*2:主たる物の処分は、従たる物の処分を伴う。ただし、反対の証拠があるときは、この限りでない。