【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第88条【用益物の修繕③】

前条ノ規定ハ建物カ朽敗ノ為メ崩頽シ又ハ事変ニ因リテ破壊シタル場合ニモ之ヲ適用ス但第百六条ニ定メタル如ク此等ノ事ニ因リテ用益権ノ消滅ヲ致ストキハ此限ニ在ラス*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

346 建物に大修繕を必要とする原因はいろいろあります。古い建物で自然に敗頽するものもあります。また、大風・地震・火災のような事変によることもあります。このほか新築の建物でも屋根や壁などに修繕を加える必要が生じることもあります。例えば、草葺の屋根のようなものは、その建物がなお新築でも改葺を要するのが普通です。このさまざまな原因の中で、建物が年を経て朽廃に至って崩頽した場合や、事変によって破壊された場合には、やはり前条の規定に従い、虚有者・用益者が任意に大修繕をすることができるかどうかについては、疑問がないとはいえません。そのため、本条を掲げて前条の規定を適用すべきことを示しました。

 本条は用益物である建物が崩頽・破壊した場合について規定したものです。その崩頽・破壊の場合は、つまり用益物が滅失する場合で、第42条第6号にいう毀滅により所有権が消滅するのと同一の理により、第99条に従って用益権が消滅するのがふつうです。果たして用益権が消滅した場合には、もとより前条によって大修繕をすることができません。そのため、本条にただし書を加えて、用益権が消滅しないときに限るという意を示しました。用益権が消滅しない場合とは、第106条に明言するように、土地が主たる用益物で、建物がその従として付属する場合を指します。例えば、開墾所に建築した小屋の類です。

 

347348 略(論説)

*1:前条の規定は、建物が朽敗のために崩頽し、又は事変によって破壊された場合にもこれを適用する。ただし、第106条に定めるように、これらのことによって用益権が消滅したときは、この限りでない。