【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第163条【特別法の規定に従うことを要しない石坑が永借地にある場合】

1 永借地ニ既ニ採掘ヲ始メ且特別法ニ従フヲ要セサル石類、石灰類其他ノ物ノ石坑アルトキハ永借人ハ其収益ヲ継続ス*1

 

2 右石坑ヲ未タ採掘セス又ハ其採掘ヲ廃止シタルトキハ永借人ハ永借地ノ改良ノ為メ石其他ノ物料ヲ採取スルコトヲ得*2

 

【現行民法典対応規定】

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

90 前条では特別法の規定に従うべき鉱坑が永借地にある場合が想定され、本条では特別法の規定に従うことを要しない石坑が永借地にある場合が想定され、それぞれについて永借人の権利がどうなるかを規定しています。

 上の石坑については、民法は既に採掘を開始している場合と開始していない場合とを区別し、第1の場合には永借人がその収益を継続する権利を有するとしました。つまり、永借人はその用益者と同一の権利を有するわけです(第63条)。第2の場合には、永借人は永借地の改良のために採掘を行う権利があるとしました。この点は用益者の権利と大いに異なるところです。用益者はその用益物の建物・牆壁その他の部分の大小修繕に必要な材料だけを採取することができるだけですが(同条)、永借人は永借地の改良のために材料を採取することができます。つまり、用益者は消極的に用益物を「保存」するために採取を行う権利を有するにとどまり、永借人は積極的に永借物を改良するためにも採取を行う権利を有するわけです。このように永借人の権利を拡大したのは、永貸借の主たる目的は、荒蕪地を開墾し、これを改良して価値を生じさせることにあるからです。

*1:永借地に既に採掘が開始され、かつ、特別法に従うことを要しない石類、石灰類その他の物の石坑があるときは、永借人はその収益を継続することができる。

*2:前項の石坑が採掘されず、又はその採掘が廃止されたときは、永借人は、永借地の改良のため、石その他の物料を採取することができる。