【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第62条【樹林・竹林の用益④】

1 用益者ハ用益樹木ヲ植続キ又ハ植増ス為メ其用益地ノ苗床ヨリ苗木ヲ採取スルコトヲ得*1

 

2 又用益者ハ其苗床ノ苗木ヲ定期ニ売ルコトヲ得但従来此用方アルトキ又ハ其生殖カ用益地ノ需用ニ余ルトキニ限ル*2

 

3 右孰レノ場合ニ於テモ用益者ハ苗芽又ハ種子ヲ以テ苗床ヲ保持スルコトヲ要ス*3

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

279 樹林を有する者は、その保存のためあらかじめ苗木を培養することがあります。このような場合に樹林と苗木とをあわせてその上に用益権を設定した場合は、用益者はその苗木を採取して樹林の樹木を植え続けたり、植え増したりすることができます。善良な管理人の所為は常にこのようなもので、これは用益者の権利をいうよりもむしろその義務というべきです。

 第2項は、真に用益者の権利を規定したものです。その売却の一事を明言していますが、用益者は自己の樹林にその苗木を用いることができることはもちろんです。

 第3項は、すべて用益者の用益物を保存する義務に属するものです。

 以上が、樹林と苗木と連帯している場合についての規定です。苗木場だけに用益権を設定した場合には、用益者はその苗木を売却したり、自己の用に充てたりすることができるのはもちろんです。ただし、この場合にも苗木場の保存義務を負担することは上と同じです。

*1:用益者は、用益樹木を植続け又は植増すため、その用益地の苗床より苗木を採取することができる。

*2:用益者は、その苗床の苗木を定期に売ることができる。ただし、従来この用法がなされていたとき、又はその生殖が用益地の需用に余るときに限る。

*3:前2項の場合において、用益者は苗芽又は種子をもって苗床を保持しなければならない。