【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第122条【代理人への準用】

前三条ノ規定ハ代理人ニ之ヲ適用ス但代理委任ノ書面ヲ以テ其権限ヲ伸縮シタルトキハ此限ニ在ラス*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

14 前3条は法律上の管理人・裁判上の管理人についてその権限を規定したもので、本条は代理人の権限を規定しています。

 代理人は契約で代理を委任された者で、これを「契約上の管理人」といいます。既にこれを管理人の1つとする以上は、法律上の管理人・裁判上の管理人とその権限を異にすべき理由はありませんので、前3条の規定を代理人に適用するものとしました。

 代理人は委任者本人の委任権限内で事を処理すべき者で、その委任を受けていない事項を処理する権限がないことは当然です。そのため、前3条の規定を適用するといっても、ただ賃貸借に関して特別の委任がない場合にその規定を適用すべきことを示すにとどまり、特別に契約で代理人の権限を定めた場合にはその契約に従わなければならないのは当然です。つまり、特別の委任がある場合には法律上の管理人・裁判上の管理人は第119条に規定した期間よりも長い期間を約することができるのと同様に、代理人も本人の委任があれば長い期間を約することができますし、これに対し、本人が特に期間を制限した場合には、たとえ第119条の期限よりも短いときでも、代理人はその制限以上の期間を約する権限を持ちません。

 賃貸借の更新と賃料についての前2条の規定は、公の秩序に関するものではないので、当事者がこれに反することを定めることは自由です。つまり、委任者本人が特別の委任をした場合には、代理人第120条の要件によらずに有効に更新をすることができ、金銭以外の有償物を賃料とすることもできます。これに対し、更新をする権利を与えないと本人が明言した場合には、代理人は更新をすることができません。

*1:前3条の規定は、代理人について準用する。ただし、代理委任の書面によりその権限を伸縮したときは、この限りでない。