【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第123条【妻・自治産の未成年者による賃貸借】

自己ノ財産ヲ管理スルコトヲ得ル婦及ヒ自治産ノ未成年者モ亦管理人ト同一ノ条件ニ従フニ非サレハ其財産ヲ賃貸スルコトヲ得ス*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

15 財産取得編第15章で夫婦財産契約について規定し、第424条で、財産契約を締結せずに婚姻した場合には財産関係は法定の制度に従うものとしました。ここにいう法定の制度によれば、夫は妻の特有財産を、入夫は戸主である妻の財産を管理します(第428条)。その管理が失当なために夫や入夫が妻の特有財産や戸主である妻の財産を危険な状態にした場合には、妻や戸主である妻は自らその財産を管理することを請求することができることとしました(第432条)。つまり、この場合には妻自らその財産を管理することとなり、賃貸に付すこともできますが、もともと妻は無能力者で世事の経験に乏しいので、その賃貸借をするに当たって自分に不利益な契約をすることがないとも限りません。法律はこれを保護する目的で管理人について規定したのと同一の条件に従わなければならないこととしました。

 自治産の未成年者つまり婚姻した未成年者や満15年、満17年に達して父母や親族会から自治産を許された者(人事編第213条以下)は、まだ完全な能力を有していません。まだ世故に熟していないので、たとえ自分がその財産を管理することとなっても、それを放任すると奸猾の者によって自ら不利益を被ってしまう可能性があるので、法律はこれを保護するために、賃貸借をするに当たっては管理人と同一の条件に従わせることとしました。

 人事編第219条に「第194条に掲げる行為については、自治産の未成年者は保佐人の立会いがなければこれをすることができない」とあり、第194条第2号には物権を設定すること、第6号には財産編第119条に定めた期間を超える賃貸借をすること、という2つの行為を掲げています。賃貸借をすることは物権を設定することなので、第219条に従って保佐人の立会いが必要となるのは当然です。保佐人が立ち会ってこれをするとすれば、本人の身に不利益な条件を約することもないでしょう。そうすると、本条はわざわざそのようなことを定める必要もないように思われます。

*1:自己の財産を管理することができる妻及び自治産の未成年者は、管理人と同一の条件に従ってその財産を賃貸しなければならない。