【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第121条【賃料】

1 管理人ハ金銭外ノ有価物ヲ貸賃ト為シテ賃貸スルコトヲ得ス*1

 

2 然レトモ耕地ニ付テハ其産出物ヲ貸賃ト為シテ賃貸スルコトヲ得*2

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

13 第115条によれば、賃貸借は、賃借人より賃貸人に「金銭その他の有償物」を定期に支払うことを約し、賃借人に一定の期間賃借物を使用・収益する権利を与えるとあります。そのため、賃料については金銭に限らず他の有償物でこれを定めることも賃貸人・賃借人双方の自由です。これに対し、管理人が賃貸する場合について本条は特にその例外を設け、金銭以外の有償物を賃料とすることを認めないのはなぜでしょうか。

 金銭はその価値がほとんど確定しており、動くことはありません。そのため、これを賃料とすれば、所有者は定期的に一定の額を収取し、あえて不利益を受けることもありません。これに対し、他の有償物はその価値が常に確定せず、時々刻々と変動するので、それが高価であれば所有者に利益がありますが、低価であれば所有者の損失となるのは明らかです。しかも、これを保存するのに手数と費用がかかりますし、これを売却して金銭に変えようとするにも、市場に運搬する費用などがかかります。とうてい所有者の利益をならないおそれがあるので、この特例を設け、これにより所有者を保護しようとするわけです。

 しかし、耕地の賃貸借については、その産出物を賃料とすることを認めています。耕地の産出物つまり米麦のようなものは所有者の生活必需品なので、これを賃料としても、所有者がわざわざこれを他から買い入れる不便を避けることができるだけなく、市場を経由するために価値が上がる部分だけを自分の利益をすることもできます。たとえその賃料である産出物が所有者の需用を超えることがあっても、古くから日本では田地については作徳米を賃料とする習慣があり、法律でこの習慣を打破するべきでもないので、特例にまた1つの特例を設けたのです。ただし、その賃料とすべきものは賃貸に付した耕地から産出した物に限り、他の土地の産出物を賃料とすることができないのは当然です。

*1:管理人は、金銭以外の有価物を賃料として、賃貸借をすることができる。

*2:耕地の賃貸借においては、その産出物を賃料とすることができる。