【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第150条【家具が付属している建物の賃貸借の終了】

1 家具ノ付キタル建物ノ賃貸借ニ付キ黙示ノ更新アリタルトキハ解約申入ヨリ返却マテノ時間ハ左ノ如シ

第一 前賃貸借ノ期間ヲ三个月又ハ其以上ニ定メタルトキハ一个月

第二 三个月未満ノ賃貸借ニ付テハ原期間ノ三分一

第三 日日ノ賃貸借ニ付テハ二十四時*1

 

2 右規定ハ黙示ノ更新後ノ動産ノ賃貸借ニ付テモ亦之ヲ適用ス*2

 

3 賃貸セシ建物ニ備ヘタル動産又ハ用方ニ因ル不動産ト看做ス可キ動産ノ賃貸借ハ其建物ノ賃貸借ノ終了スルニ非サレハ終了セス*3

 

【現行民法典対応規定】

なし 

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

72 本条は、家具が付いている建物・動産の賃貸借で黙示の更新があった場合について規定するものです。

 家具の付いている建物や動産の賃貸借で期間が明示されている場合に、その期間が満了した後、賃借人がなお収益し、賃貸人が異議を留めずに黙示の更新があったときは、もはやその期間を推定すべき根拠がなくなりますので、その賃貸借が終了すべき時期を定めなければなりません。本条は、この場合について前条の場合と同じくいつでも解約を申し入れ、これにより賃貸借を終了させることができるとしたものです。

 しかし、家具の付いた建物の賃貸借は、永住目的によるものではありません。動産だけの賃貸借もまた一時的に利用するためになされるものにすぎません。そのため、解約申入れより返却までの間に多くの日数を与えずとも、賃貸人がさらに賃借人を探し求めることに、また賃借人がさらに同様の賃借物を探し求めることに、大変な不便を生ずることはないでしょう。そこで、この猶予期間を24時以上1か月以下と定めたわけです。

 

73 動産だけの賃貸借では、その猶予期間が短くとも決して不都合を生ずることはありませんが、建物とともに賃貸借した動産、つまりその建物に備え付けた動産や用法による不動産とみなすべき動産(第9条)については、その賃貸借の終了は、主たる建物の賃貸借の終了と同時にしなければなりません。建物の賃貸借がまだ終了していないのにこの動産を返却させようとするのは、事実上無理があるだけでなく、返却を強いても双方に利益なく、かえって大きな不都合が生じることでしょう。そのため、この動産の賃貸借は、建物の賃貸借が終了するのでなければ、終了することはないと定めたわけです。

*1:1 家具が付属している建物の賃貸借において、黙示の更新があったときは、解約の申入れより返却までの期間は、次の各号の定めるところによる。

 一 前の賃貸借の期間を3か月又はそれ以上に定めたとき 1箇月

 二 3か月未満の賃貸借 原期間の3分の1

 三 日々の賃貸借 24時

*2:前項の規定は、黙示の更新後の動産の賃貸借についても適用する。

*3:賃貸した建物に備え付けた動産又は用法による不動産とみなすべき動産の賃貸借は、その建物の賃貸借が終了するのでなければ、終了しない。