【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第151条【耕地等の賃貸借の終了】

土地ノ賃貸借ニシテ期間ヲ定メサルモノ又ハ期間ヲ定メタルモ黙示ノ更新アリタルモノハ耕地ニ付テハ主タル収穫季節ヨリ六个月前又不耕地其他牧場、樹林ニ付テハ返却セシム可キ時期ヨリ一个年前ニ解約申入ヲ為スニ因リテ終了ス*1

 

【現行民法典対応規定】

617条2項 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

74 本条は、土地の賃貸借で期間を定めない場合や、期間を定めていても第147条により黙示の更新があった場合に、その終了すべき時期を定めたものです。

 ここで本条の規定と前の数か条の建物に関する規定を対照すると、これらには2つの差異があることがわかります。

 第1の差異 建物については解約申入れより返却までの時間は長くとも3か月に過ぎません。これに対し、土地については6か月または1年の長期にわたることが必要です。このように賃貸借終了の時期に長短があるものは他にはありません。建物については、賃借人は他に類似の建物を発見することはそう難しくはないでしょうし、賃貸人もまた新たな賃借人を発見することは容易でしょうが、土地についてはその状況がまったくこれとは異なるという理由によるものです。

 第2の差異 建物については解約申入れはいつでもこれをすることができますが、土地については、耕地と不耕地とを区別し、不耕地は建物の場合と同様にいつでも解約申入れをすることができるとしていますが、耕地はその主たる収穫季節から6か月前でなければ解約申入れをすることができないものとしました。当事者双方の意思は、賃借人が自ら播種鋤耘した収穫は賃借人がこれを得るということにあると推知すべきなので、耕地については特例を設け、いずれの場合でも賃借人がその収穫を得られずに退去するという不利を受けることがないようにしたわけです。

 そのため、例えば米田については、毎年の収穫季節が11月であれば5月中に解約申入れをすることが必要です。3月、4月にその申入れをして、9月、10月に返却しようとしても、法律はこれを認めません。

 耕地での収穫が年に2回以上に及ぶ場合、例えば最初は麦作をし、後に蔬菜を育てる場合には、その中のいずれの収穫季節についてこの6か月の猶予期間を計算すべきでしょうか。各収穫について計算するとすれば、解約申入れをする時期がないことになります。そのため、法律は「主たる」収穫時期から6か月前であれば有効に解約申入れをすることができるものとしました。つまり、前例の場合では、蔬菜はいわゆる間作で主たる収穫ではないので、それがまだ収穫時期に達していなくとも、麦の収穫が終わり、その6か月前に解約申入れがなされている場合には、その土地を返却させることができます。

*1:土地の賃貸借で期間を定めないもの、又は期間を定めたものであっても黙示の更新があったものは、耕地については主たる収穫季節より6箇月前、不耕地その他牧場、樹林については返却すべき時期より1年前に、解約申入れをすることによって終了する。