1 公ノ法人カ各人ト同一ノ名義ニテ所有スル物ニシテ金銭ニ見積ルコトヲ得ル収入ヲ生ス可キモノハ其私有ノ部分ヲ為ス即チ国、府県、市町村有ノ海潟、樹林、牧場ノ如シ*1
2 所有者ナキ不動産及ヒ相続人ナクシテ死亡シタル者ノ遺産ハ当然国ニ属ス*2
【現行民法典対応規定】
本条2項
239条2項 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
118 本条第1項は、公の法人に属する資産の中でどのような物が私有物に当たるかを示しています。この種の物は、すべて民法に支配されることを通則とします。
第2項は、物の区別を主とした規定ではありません。そのため、この総則の中に掲げるべきものではありません。これについて説明しましょう。
公の法人に属する資産の中でどの物がその私有に属するかを知りたければ、これをどのような用に供しているかを見ればよいのです。これを第22条に掲げた用法に直接用いなかったり、賃貸して賃金を得たり、産出物を収穫したりするなど自分が自分の財産を管理するのと同様のことをする場合には、公の私有に属します。各人が財産を有するのと同様の状況にあるので、法律がこれを公の公有財産として取り扱わないからです。
本条の事例に示すように、国有の山林・原野等には、国用に供するものではありませんが、収入があるものがあります。また、たとえ現に収入がなくとも収入を生ずる可能性があるものもあります。そのため、これらは私有に属します。
海潟とは、海の干潟をいいます。品川湾の中にこの類が多くあります。
このほか例えば道路・城塞等を廃止して不用とすると、その公用の性質を脱しますが、まだ現に収入を生じていなくとも、これを生ずる可能性があるものなので、これもまた公の私有に属します。
119 本条第2項は、所有権の帰属を定めるものです。例えば、原野・山林など広さを測ることが難しいところには、誰の所有にも属しない土地がないとはいえません。また、相続人なく死亡した者の遺財は無主物となるべきものです。しかし、これらの物を無主物とすると、誰もがこれを取得することができることとなり、実際に紛争を引き起こすことも少なくないでしょう。そのため、民法は特に規定を起き、これをすべて国有とすることとしました。この種の物はまだ国用に供してはいないので、国の私有に属することはもちろんです(次条参照)。
明治17年第7号地租条例第25条によれば、そもそも日本の国土は私有ではなく、国有です。そのため、土地については既に民法に先立って無主物ではないことがさだめられています。
120・121 略(論説)