公共物トハ何人ノ所有ニモ属スルコトヲ得スシテ総テノ人ノ使用スルコトヲ得ルモノヲ謂フ即チ空気、光線、流水、大洋ノ如シ*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
124 「公共」とは、「万人に共通する」、「公衆がともに使用する物」という意味です。無主物には主がなく、これを使用する者もいません。公共物には一定の主はいませんが、公衆みんながともに使用します。これが無主物と公共物とが異なる点です。また公共物は誰もこれを特に所有することはできません。これが公共物と他の有主物と異なる点です。
天地間の空気、太陽の光線、河中の流水、大洋の水のようなものは、万国の人がともに使用することができ、誰もこれも特有することができない公共物です。そのため、これを契約の目的物とすることはできません。また、時効によりこれを取得することもできません。
125 民法は、公共物を「所有者のない物」の中に加えました。しかし、「公共」であれば公衆に属するわけですから、これを無主物としないのが穏当です。
本条で誰の所有にも属しないとするのは、無主物という意味ではなく、ただ「我々一人一人が特有専占することができない」という意味です。
*1:公共物とは、空気、光線、流水、大洋のように、何人の所有にも属することなく、すべての人が使用することができるものをいう。