【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第141条【賃借物の用法】

1 賃借人ハ明示ト黙示トヲ問ハス合意ヲ以テ定メタル用方ニ従フニ非サレハ賃借物ヲ使用スルコトヲ得ス*1

 

2 其合意ナキトキハ契約ノ時ノ用方又ハ賃借物ノ性質ニ相応シテ毀損セサル用方ニ従フニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス*2

 

【現行民法典対応規定】

616条 第594条第1項の規定は、賃貸借について準用する。

*594条1項 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

51 賃借人は、賃借物に権利を有しますが、その権利を行使するについて、賃借物の元質本体を変更することができません。賃貸借が終了する場合には、旧状のままでこれを返還する義務があるからです。そのため、その物を使用するには、明示・黙示の合意で定めた用法に従わなければなりません。その合意がない場合には、契約時の用法つまり所有者が当時依拠していた用法に従うべきで、この用法がない場合には、賃借物の性質に応じて適当な用法でこれを使用しなければなりません。

 合意で定めた用法に従わず、他の用法に従い、それにより損害を生じないのであれば、賃借人はその用法に従ってもよいのでしょうか。この疑問は、損害が結果的に生じなかった以上、他の用法に従うことを認めても妨げないと解釈すべきでしょうかというようなものです。しかし、合意は当事者間では法律と同一の効力を有するので、損害の有無にかかわらず、これに違反することを認めるべきではありません。そのため、賃借人とその家族の住居のために建物を賃貸したにもかかわらず、賃借人がこれをその住居に使用せず、物品貯蔵に用いたり、旅人宿や下宿に利用したりする場合には、それによりその建物を毀損することがなくても、賃貸人は合意違反を主張し、第139条に規定した権利を行使することができます。

*1:賃借人は、明示又は黙示の合意によって定めた用法に従わなければ、賃借物を使用することができない。

*2:前項の合意がない場合には、契約の時の用法又は賃借物の性質に応じて毀損しない用法に従わなければ、これを使用することができない。