用益物ノ全部又ハ一分カ火災ニテ滅失シタルトキハ用益者ニ過失アリト推定ス但反対ノ証拠アルトキハ此限ニ在ラス*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
334 本条は、家屋の用益者に対して特別の責任を負担させるものです。
前条でも用益者はもとより過失や懈怠の責任を負うと定めていました。しかし、前条のような場合には、法律は用益者に過失があったものと推定していません。そのため、虚有者が損害賠償を要求しようとする場合には、まず用益者に過失や懈怠があったことを証明しなければならない場合があります。これに対して、本条は用益者に過失があったものと推定するので、虚有者は用益者の過失や懈怠を証明する必要がありません。用益者はその責任を免れようとするのなら、必ず自分に過失や懈怠がないことを証明しなければなりません。つまり、挙証責任が用益者にあるわけです。
335 略(論説)
*1:用益物の全部又は一部が火災で滅失したときは、用益者に過失があったものと推定する。ただし、反対の証拠があるときは、この限りでない。