用益権ノ廃罷ハ其廃罷前ニ用益者ノ加ヘタル損害ノ賠償ヲ妨ケス*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
406 第84条に規定するように、用益者はその過失・懈怠により生ずる用益物の滅失や毀損の責任を負いますが、廃罷によって用益権が消滅しても、それにより責任を免れるわけではありません。いったん損害が発生すれば、これを賠償すべき義務が直ちに発生するので、理由なくその義務を免れることはできません。廃罷の場合にだけそうなのではなく、他の用益権消滅の場合でもまた同じです。廃罷の場合についてだけこうした規定を置いたのは非常に奇妙ではありますが、それには理由があります。廃罷は、用益者が損害を加えたことに対する責罰なのです。既にその責罰として用益権を廃罷したにもかかわらず、さらに損害を賠償させるのは一事再罰といえなくもありません。これを避けるために明文が設けられたわけです。
*1:用益権の廃罷は、その廃罷前に用益者が加えた損害の賠償を妨げない。