使用権及ヒ住居権ノ程度ヲ定ムル為メ使用者ノ家族ト看做ス可キ者ハ使用者ト共ニ住居スル配偶者卑属親尊属親及ヒ使用者又ハ此等ノ親族ノ随身雇人ナリ*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
418 使用権・住居権は使用者とその家族の需用の程度に限定するとされているので、どのような者がその家族に当たるかを示さなければなりません。これを示さなければ紛争を生じ、訴訟を惹起するからです。本条はそのために設けられたものです。
本条によれば、家族と称する者は以下の通りです。
① 配偶者 使用者の妻・夫。
② 卑属親 使用者の子・孫・曽孫・玄孫など。
③ 尊属親 使用者の父母・祖父母・高祖父母など。
卑属親・尊属親でも6親等を超えるものについては民法上の効力を生じません(人事編第19条)。そのため、本条の家族の中には含まれません。
④ 用益者、上記配偶者・卑属親・尊属親の随身雇人で常にその身辺にあって雑用をする僕婢など 番頭や手代と称する商業使用人は、本条の家族の中には含まれません。
以上に列記した者でも、使用者と住居をともにしているのでなければ、これを家族とみなすことはできません。住居を異にする者は別家している場合も多く、これを家族とみなすとすればその需用の多少を定めることが必要になりますが、このことは非常に困難なので、紛争・訴訟を生じる原因となるでしょう。そのため、法律は居をともにすることを必要条件としたわけです。