【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第144条【賃貸人の先買権】

賃貸人ハ賃貸借ノ終ニ於テ第百三十三条ニ依リテ賃借人ノ収去スルヲ得ヘキ建物及ヒ樹木ヲ先買スルコトヲ得此場合ニ於テハ第七十条ノ規定ヲ適用ス*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

54 賃借人は、その賃借地に建物を築造したり、樹木を栽植したりした場合には、賃貸借の終了時にこれを収去することができますが、場合によってはこれをそのまま売却したいと思うこともあるでしょう。そうする場合には、賃貸人にまず売買の権利を与えるのが相当です。国家の経済にとっても、賃借人・賃貸人双方にとっても利益があるからです。法律は第70条で用益者が用益地に築造した建物や栽植した樹木を売却しようとする場合には、虚有者にその先買権があるとしていました。賃貸借もまた多くの点で用益権に類似するだけでなく、この建物や樹木はこれを設けた人が異なっていても、それが他人の所有地に設けられたということは用益権の場合と異なるところはありません。そのため、本条で賃貸人にもまた先買権があることを確認しました。

 既に賃貸人に先買権があるとする以上は、賃借人より賃貸人に先買権を行使するかどうかについて催告をする等の手続をしなければなりません。この手続については用益権に関し既に第70条に詳細に規定してあるので、本条の場合にはその規定を適用すべきものとし、これにより重複を避けています。

*1:賃貸人は、賃貸借の終了時に、第133条により賃借人が収去することができる建物及び樹木を先買することができる。この場合においては、第70条の規定を適用する。