1 意外又ハ不可抗ノ原因ニ由リテ賃借物ノ一分ノ滅失セシトキハ賃借人ハ第百三十一条ニ記載シタル条件ニ従ヒテ賃貸借ノ解除ヲ要求シ又ハ賃貸借ヲ維持シテ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得*1
2 公用ノ為メ賃借物ノ一分カ徴収セラレタルトキハ賃借人ハ常ニ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得*2
【現行民法典対応規定】
611条1項 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
62 賃借物が全部滅失した場合には、その原因を問わず、当然に賃借権は消滅しますが、その滅失が一部にとどまる場合には、賃借人より賃貸借の解除を請求したり、賃料の減額を請求することを認めるにとどめています。
しかし、賃借人にこの請求権を与えることについては、法律は第131条で数個の要件を規定していますので、その要件を具備しなければ賃借人はその請求をすることができません。その要件とは次のものです。
① 賃料の減額を請求するには、妨害が不可抗力か官の処分により生じたものであること、毎年の収益の3分の1以上の損失を生じたことという2つの要件を具備しなければなりません。そのため、この要件の1つを欠く場合には、賃借人にこの請求権は認められません。
② 賃貸借の解除を請求するには、①に挙げた賃料の減額を請求することができる2つの要件のほか、その妨害が3年に及ぶことという3つの要件を具備することが必要で、建物の賃貸借については、この要件①と、所有者が1年以内に再築しないことという要件を具備することが必要です。
この要件の詳細は既に第131条で説明したので、ここでは述べません。
本条第2項は、賃借物の一部が公用徴収を受けた場合には、賃借人は常に賃料の減少を請求することができるものとしました。これは特例で、以上の要件を具備する必要はありません。他の原因による賃借物の一部滅失の場合には、賃貸人も賃借人とともに損失を受けることを免れないので、その損失が些少で収益の3分の1に達しない場合には、賃貸人・賃借人ともにその損失を負担すべきものとし、賃借人に賃料減額の請求権を与えません。公用徴収の場合には、その徴収された部分が至って小さくとも、賃貸人はなお償金を受けることができます。つまり、賃貸人は少しも損失を受けません。このように、一方では償金を受け、他方ではその徴収を受けた部分の賃料を取得するとすれば、これは不当な利得といえます。そのため、法律は、この徴収に関する部分がいくら些少だろうと、その部分に応じて賃料の減額を請求することを認めないものとしました。