【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
97 「消費物」とは「使用することによって消滅する物」という意味です。例えば、酒・醤油・酢・味噌・米・薪炭の類です。衣服・膳椀・時計の類もまた使用することによってだんだん消費するものです。しかし、本条にはただ1回の使用で消費する物だけを挙げています。そのため、日本民法は衣服の類を消費物とはしていません。
通用貨幣を消費物として論じる学者もいます。しかし、貨幣は実は他人の手に移転するだけで天然に消費するわけではありません。そのため、これは法定の消費物といえ、日本民法はこれを消費物とせずに定量物としています。
98 消費物と不消費物との区別は、他の区別のように法律上で関係するところは多くありません。ただ用益権についてはこれを必要とすることがあります(第55条参照)。
西洋の学者の議論によれば、用益権は不消費物だけに設定することができます。消費物に設定したものは変則的なもので、真の用益権としません。これについては、用益の章で説明します。
*1:物が消費物又は不消費物であるかは、その性質により1回の使用で消費するどうかによって定まるものとする。