1 用益者ハ大小木ノ樹林及ヒ竹林ニ付テハ従来ノ所有者ノ慣習及ヒ採伐方ニ従ヒ定期ノ採伐ヲ為シテ収益ス*1
2 採伐方ノ未タ確ニ定マラサルトキハ用益者ハ近傍ノ重モナル所有者又ハ国府県市町村ニ属スル樹林ノ慣習ニ従フ但採伐スル一个月前ニ虚有者ニ予告スルコトヲ要ス*2
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
274 本条も天然の果実の収取方法を示すものです。
そもそも樹林には2種類あります。第1は伐株から萌芽を生ずるもの、第2はそうでないものです。わが国では第2のものも定期採伐することがあり、採伐してさらに苗木を栽植し、樹林とすることがあります。
第1の樹林と、第2のもので定期採伐をする樹林の多くは、薪炭の用に供されます。例えば5年・8年・10年・20年に1回採伐します。ふつうは所有者がその採伐の時期を定め、その時期が到来するのを待って採伐します。
樹林の面積が広大であれば、これをいくつかの区に分けて毎年そのうち1区を採伐することがあります。例えば、10町歩の樹林を10区に分け、毎年1区ずつ採伐するような場合です。これを「輪伐林」といいます。
多くの竹林は毎年伐採されます。
上のように採伐して収益する慣行のある樹林に用益権を設定した場合には、用益者はこれを採伐することができます。しかし、従前に虚有者が行っていた慣行に反することができません。
虚有者がまだ明確に採伐方法を定めていない場合には、近隣にある樹林の慣例に従います。ただし、慣例としてよるべきほどの主要な樹林に従います。国有・府県有・町村有の樹林がある場合には、その慣例に従うことができます。民法は必ずしもどの慣例に従うべきかを命じていません。そのうちの穏当なものに従わせる趣旨です。
275 民法は、用益者が採伐しようとする場合には、1か月前に虚有者にその通知をすべきことを規定しています。用益者が果たして法律に従って採伐するかどうか、虚有者に監督させようとする趣旨です。また、用益者は善良な管理人のようにする義務を負います。そもそも善良な管理人は有用な樹木を採伐しません。必ずこれを保存して長大となるのを待つものです。このただし書はこうしたことをさせるためのものです。
樹林が第2のものに属する場合には、次条の規定に従います。第1の樹林であっても、保存して大木としようとするものも次条の規定に従います。
276 略(論説)