訴訟ニ参加ス可クシテ之ニ参加セシメラレサリシ虚有者又ハ用益者ハ其判決ノ害ヲ受クルコト無シ然レトモ事務管理ノ規則ニ従ヒテ其利ヲ受クルコトヲ得*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
386 第三者が用益不動産に関して用益者との間に訴訟をした場合には、その訴訟は侵害行為の1つなので(381参照)、用益者はその事実を虚有者に告発し、虚有者をその訴訟に参加させる必要があります。また、完全所有権に関し、第三者と虚有者との間に訴訟が起こった場合には、虚有者より用益者をその訴訟に参加させなければなりません。これは前2条に規定したところです。用益者は虚有者を、虚有者は用益者をその訴訟に参加させる手続をせず、自分1人でそのことに当たったなどの場合には、判決の効力を参加させられなかった虚有者・用益者に及ぼすことができるのでしょうか。本条はこれに断案を下して、その利益を及ぼすことはできますが、その害を及ぼすことはできないとしました。どういう理由でこうなったのか、以下で少し説明しましょう。
そもそも判決は当事者間の争訟について下すものです。そのため、その効力は当事者間に及び、当事者はこれを遵奉しなければなりません。しかし、その訴訟に関係しない者は、たとえ訴訟が起こったことを知っていても、自身は衡に当たる者ではないので、何らの申立てもしません。初めから局外傍観の地位を守り、あえて自己の利益を保護することのない者です。そのため、判決の利害をこれに及ぼすべきという論理はありません。虚有者と用益者とは互いに代理する者ではありませんが(フランスの学者には暗黙の代理を認める者があります)、同じく物に権利を有する者なので、これらはまったく利害関係がないとはいえません。虚有者・用益者がその物に関して訴訟をし、他を訴訟に参加させないとしても、自己の利害が他の利害ともなる場合には、自己の利益とともに他の利益をも保護するのが適当です。このような好意で他の利益を保護するのは、つまり他の事務を管理するのにほかならないので、第361条以下の規定に従い、その判決の利を他に及ぼさせるのです。ただその害は事務管理の性質としてこれを本主に負わせることを許さないので、本条はその旨を明言しています。