【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第11条【性質による動産】

自力又ハ他力ニ因リテ遷移スルコトヲ得ル物ハ性質ニ因ル動産タリ但第八条及ヒ第九条ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス*1

 

【現行民法典対応規定】
なし

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

75 動産にもまた、性質によるもの・用法によるもの・法律の規定によるものの3種類があります。また、動産か不動産か未定の場合もあります。これについて以下で説明します。


76 鳥獣は他の力を借りずに動きます。これを「自力で動く」といいます。器物は、自力で動くことができません。必ず他の力を借ります。これを「他力で動く」といいます。そのため、「性質による動産」を細かく分けると、自力で動くものと他力で動くものとの2種類があることになりますが、法律上これを区分する必要はありません。

 「性質による動産」でも、それが土地・建物と一体となった場合には「性質による不動産」となり、これに付属した場合には「用法による不動産」となります。そのため、本条にただし書を加えて、除外例があることが示されています。

 要するに、第6条から第10条までの各条に掲げた種々の不動産に属しないものは、すべて動産です。特に、本条以下第14条まで3か条を設けて区別しているのは、主として不動産の区別と同じ趣旨の規定をしようとするためです。日本民法が教科書体であるとの評価を受けるのは、こうした条項を掲げているためでしょう。

*1:自力又は他力によって遷移することができる物は、性質による動産とする。ただし、第8条及び第9条に定めるものは、この限りでない。