【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第156条【永貸借の設定】

永貸借ハ永貸借契約ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス其遺贈又ハ予約ニ付テハ第百十七条ノ規定ニ従フ*1

 

【現行民法典対応規定】

なし

 

亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之二』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

83 永貸借もまた一種の賃貸借で、普通の賃貸借と異なるのは、期間の長短と、当事者の権利・義務に違いがあるという点だけです。そのため、その設定原因などは異なるところがありません。普通の賃貸借は契約で設定するものとしたため、この永貸借もまた契約で設定するものとしなければなりません。つまり、本条は第117条と同一の規定をしたもので、別に説明することはありません。

 しかし、ここに1つ注意すべき点があります。本条は永貸借契約によってしなければ永貸借を設定することはできないと明言していますが、永貸借は必ずしも永貸借契約に基づくものではありません。その名前は普通の賃貸借でも、その期間が30年を超えるものは当然に永貸借となります。これは第125条が規定しています。そのため、契約の名前ではなく、その実体によって永貸借かどうかを判定しなければなりません。

 

*1:永貸借は、永貸借契約によってしなければ、これを設定することができない。永貸借の遺贈又は予約は、第117条の規定に従う。