1 用益権ハ一人又ハ数人ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スルコトヲ得*1
2 数人ノ終身ヲ期シテ設定シタルトキハ数人同時ニ又ハ順次ニ之ヲ行フ*2
3 右孰レノ場合ニ於テモ用益権ハ其権利発開ノ時既ニ出生シ又ハ胎内ニ在ル者ノ為メニスルニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス*3
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
231 用益権は、1人のためだけでなく、例えば、夫婦・親子・兄弟姉妹のように数人のために用益権を設定することができます。用益権の便宜を得させるためです。
このように用益権を設定した者は、各用益者に同時に用益権を行使させることができます。例えば、まず夫、次に妻、またははじめに親、次に子に行使させるといったようなことができます。
しかし、用益権は終身権です。この原則に違反することはできません。そのため、第2項で数人のために用益権を設定しても、権利発生の時すでに出生していた者か、胎内にある者のためにするのではなければ、その設定に効力がないことを明言しています。これもまた法律が用益権の速やかな消滅を希望しているという精神が表れたものです。
本条では、数人のために用益権を設定することを認め、または順次これを行使させ、第1用益者が死亡した場合には第2用益者にこれを行使させるような方法を定めることを認めていますが、こうしたことは用益権が終身権であることに反するものではありません。権利発生の当時既に出生していた者、胎内にある者に限り、設定の効力があることを定めているからです。