1 用益権設定ノ時用益者ノ目録又ハ形状書ヲ作ル義務ヲ免除シタリト雖モ虚有者ハ常ニ用益者ト立会ヒ又ハ合式ニ之ヲ召喚シ自費ヲ以テ目録又ハ形状書ヲ作ルコトヲ得但此事ニ付キ虚有者ハ十一日以上収益ヲ妨クルコトヲ得ス*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
310 用益権を設定するに当たり、その設定者が用益者の廉直さとその注意が周密であることを信じている場合には、その目録・形状書を作成する義務を免除することがあります。用益権は設定者の死後のために設定することが多く、その設定者の生存中に用益権の行使を始め、その用益者が廉直で周密な注意をする者でなかった場合には、設定者は信用を誤ったために損害を受けたとしても、これは自己の過失として論ずることができますが、その死後のために設定した場合には、設定者が信用を誤ったために生ずる損害は、その相続人に及びます。そのため、いったん目録・形状書を作成する義務を免除したとしても、虚有者は自費でこれを作ることができることとしました。
この場合にも、双方が立ち会うことを本則とします。召喚の手続をすることが必要です。その方法、規則は第71条と同じです。また、その証書の効力については、第72条の規定に従います。
目録・形状書を作るには、評価をすることもあり、多少の日数を要します。しかし、本条の場合には虚有者が自由に証書を作るからといって、長く用益者の収益を妨げるべきではありません。そのため、10日をその限界としたわけです。
311~313 略(論説)