1 用益権ハ始時若クハ終時ヲ定メ又ハ期限ヲ定メスシテ之ヲ設定スルコトヲ得*1
2 又用益権ハ其始時又ハ終時ヲ未必条件ノ成就ニ繋ケテ之ヲ設定スルコトヲ得*2
3 右孰レノ場合ニ於テモ其期間ハ用益者ノ終身ヲ超ユルコトヲ得ス*3
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
229 本条には、用益権の始期・終期に関する規則が掲げられています。
用益権を設定するに当たり、その開始・消滅の期限をあらかじめ定めることができます。また、そうした時期を定めずにこれを設定することもできます。その時期を定めない場合には、生存者間の契約で設定した用益権はその契約締結の日から、遺言で設定した用益権は遺言者の死亡の日から開始し、用益者の死亡によって消滅します。
また、用益権に未必条件を付し、その成就によってこれを開始・消滅させることができます(未必条件については第30条で説明しました)。
230 用益権は終身権で、これは他の権利と異なる点です。本条第3項でその原則を明言しています。用益権を設定するのに何らかの特約を設けても、用益者が死亡すれば用益権は消滅します。用益権が永続して社会経済上の弊害を生ずることを懸念してこのような制限が設けられています。そのため、当事者はこの第3項の規定に反して契約を締結しても、民法上その効力を生じません。これはいわば公益を目的とする規定で、第328条ただし書に対応するものです。
フランスには、用益権を設定するに当たりその期限を定めた場合には、用益者が死亡してもその期限の間は用益権は消滅しないとする説があります。そのため、日本民法は明文を掲げてこのような説を否定しました。
物権には多くのものがありますが、無期永久のものは所有権だけです。その他の物権にはすべて期限があり、長短さまざまです。用益権はつまり期限ある物権の第1に位置するものなのです。