担保ノ性質ニ付キ当事者ノ間ニ議協ハサルトキハ裁判所ハ顕然資力アル第三者ノ引受ヲ認許シ又ハ供託所若クハ当事者ノ認諾スル第三者ニ金銭若クハ有価物ヲ寄託スルヲ認許シ又ハ質若クハ抵当ヲ認許スルコトヲ得*1
【現行民法典対応規定】
なし
今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)
※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。
320 前条に担保を供出すべきことを定めていますが、用益者の提出した担保の性質や価格について虚有者に異議がある場合にはどうすべきでしょうか。これが本条の主眼で、裁判官にその判定権を付与したものです。
本条には「担保の性質」とだけありますが、実は主としてその価格のことを指しています。
このように争論に際しては、裁判所は衆人が資力があると認める者、つまり「顕然資力ある者」が引き受けることを認めるなどの処分を宣告することができます。
「第三者の引受け」とは、真の保証人ではありません。保証人は保証契約でこれを立てるものです。引受けもまた保証人のような結果を生じます。第三者で引き受ける者が「顕然資力ある者」であれば、裁判所はこれを許可します。
供託所とは、そもそも争いに関する物品で双方に所持させ難いものや、一方より一方に引き渡そうとしても受け取らない物の類を寄託する所です。その物品を確保しようとするためにこれを設けています。明治23年勅令第145号で発せられた供託規則があります。つまり、本条にいう供託のことを規定するものです。
用益者と虚有者との間に本条に仮定するような争論がある場合には、金銭・公債証書・株券の類を裁判所の認許を受けて供託所に預け、虚有者の権利の担保物とすることができます。必ずしも供託所に限るわけではありません。双方の信用ある銀行の類に預けてもかまいません。すべて本条は裁判所の権利を示すものです。