【日本民法】条文総まくり

旧民法から現行民法まで。1条ずつ追いかけます。

財産編第54条【法定果実】

1 法定ノ果実ハ其払渡時期ノ如何ヲ問ハス収益ヲ始ムルコトヲ得ル時ヨリ用益権ノ消滅スルマテ用益者日割ヲ以テ之ヲ取得ス*1

 

2 法定ノ果実ハ用益物ニ付キ第三者ヨリ金銭ヲ以テ払フ可キ納額即チ土地建物ノ借賃借入金ノ利息会社ノ配当金年金権ノ年金石坑ノ借料ノ類ナリ*2

 

【現行民法典対応規定】
本条1項

89条2項 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

本条2項

88条2項 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

 

今村和郎=亀山貞義『民法正義 財産編第一部巻之一』(明治23年)

※以下は同書を現代語訳したものです。意訳した部分もあります。気になる部分については原文をご確認ください。

 

253 法定果実の意味は、第51条で詳しく述べられています。

 第52条の果実は土地から分離することにより所属が区別され、第53条の果実は獣畜から分離することにより所属が区別されます。本条の果実はこれとはまったく異なります。法定果実つまり賃金・利息の類はこれを支払ったかどうかで所属が区別され、用益権開始の時既に虚有者に支払っていたものは虚有者に、未払いのものは用益者に属し、用益権消滅の時も同じく、既払いのものは用益者に、未払いのものは虚有者に属するとすれば、天然果実と同様の規定になりますが、そうすると用益権の開始・消滅の1日の違いによって大きな損益を生じることがあります。特に賃金・利子の類は、貸借の双方が通謀すれば、容易に一方に損害が生じてしまいます。民法はなるべくこのような非常の幸不幸がないように規定することを主眼としています。天然果実については非常に計算が難しいところがあり、これを日割で取得するとすれば、果実を取得する入費を控除し、実益を評価してこれを1年で分割するなど実際にはやりにくいことが多くなります。そのため、民法天然果実についてはやむをえず一刀両断の規定を設けたわけですが、法定果実には天然の果実のような困難がありません。例えば、家賃や貸金の利息は、実際には年中日々少しでも支払うのが当然のものです。期限を設けて支払うこととするのは、実際の煩労を省こうとする目的によるものにすぎません。そのため、民法法定果実については一刀両断の規定を置きませんでした。日割で用益者にその果実を属させることが公平至当だと考えたわけです。例えば、貸金の利息を毎年12月31日に1回払うことと約定した場合には、その債権について用益権を有する者は、たとえ用益権が12月31日以前に消滅しても、1月1日より用益権が消滅した日まで日割でその利息を取得します。そのため、本条では払渡時期がいつかを問わないことにしたわけです。

 収益を始める時も同様に、1年の途中から用益権が開始した場合には、たとえその開始後の利息や家賃の類を既に虚有者に前払いしていたとしても、用益者はその権利の開始後の利息や家賃はすべて日割でこれを取得します。

 第2項については、第51条で説明しました。

 年金権については、財産取得編第164条第191条に詳しく規定されています(第46条第2項参照)。

 

254256 略(論説)

*1:法定果実は、その払渡時期を問わず、収益を開始することができる時より用益権が消滅するまでの間、用益者が日割でこれを取得する。

*2:法定果実とは、土地及び建物の借賃、借入金の利息、会社の配当金、年金権の年金、石坑の借料のように、用益物につき第三者が金銭で支払うべき納額をいう。